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私は、総理の答弁に唖然とした。「製造業におけるITの活用は、日本が世界の中でも進んでいるというふうに認識をしています」。私が8月10日に行った参議院予算委員会での質疑の中の一コマだ。

日本のトップの製造業に対する認識がこの程度なのか?
日本の製造業のIT活用の遅れは各種調査で指摘されている。今、ドイツの「インダストリー4.0」をはじめ、世界各国で国家主導による製造業のIT活用の巨大プロジェクトが進んでいる。日本は再びこの第四次産業革命に敗戦してしまうのか?

「インダストリー4.0」とは、元々はドイツ発祥のコンセプトで、機械の出現による第一次産業革命、石油の活用による第二次産業革命、コンピューターの活用による第三次産業革命につぐ、ITネットワークを活用した第四次産業革命のことだ。

IoT、ビッグデータ、スマートファクトリー、モノカスタマイズ、プロトコル標準化、バリューチェーン統合、M2Mなどいずれも「インダストリー4.0」に含まれるキーワードだが、これらはどれも断片的にその特徴を捉えたものにすぎない。「インダストリー4.0」の本質は、製品を実物としてのモノではなく、そのモノを作る前段階で情報として、QCDをコントロールすることにある。

「インダストリー4.0」がこれまでの製造業と比べて決定的に違うのが、モノづくりにおいてITネットワーク対応が前提となっている点だ。ここでいうネットワークとは、営業・生産など一企業内で閉じたものではない。サプライチェーン上の他企業はもちろんのこと、顧客のニーズから設計・製造工程、顧客による利用までの一連の流れの中で生まれる情報をモノづくりのネットワークの中でやりとりし、下流工程だけでなく上流工程へもフィードバックすることを意味する。もちろん、そのネットワークは単一商品だけでなく、複数の自社商品にまたがることもあるし、エンジニアリングチェーン上のパートナー企業、さらには業界を超えることもある。

こういった、製造業が高度な情報産業へと進化する中で、従来日本が得意であったケイレツ内のカイゼン、または各業界での取り組みでは立ちゆかない所まできている。しかし、日本政府の取り組みは極めて遅れている。別表(予算委員会資料)を見てほしい。これは、冒頭の参議院予算委員会で安倍総理に質疑した際に使った資料だが、各国政府の具体的取り組みの事例だ。

各国の製造業の新「国家戦略」 出典:山田太郎事務所

ドイツのインダストリー4.0、アメリカのインダストリアルインターネット、中国の中国製造2025など、大規模な予算をつけ各国が取り組みを強化する中で、日本のこの分野に関する取り組みは遅れている。日本が今後10年間の成長戦略「骨太戦略」で唯一掲げるのは「ロボット新戦略」。しかし、中身は、ロボット革命イニシアティブ協議会がある程度で、これらに対する2015年度の予算はついていない。予算があれば、うまくいくとは必ずしも思わないが、これが現在の日本政府の姿勢だろう。
その戦略名に「ロボット」が入っていること自体が、日本の認識の遅れを感じさせる。実際は既に、世界のロボットの主戦場は中国に移っている。ロボットの出荷台数は13年に中国に抜かれ、稼働台数も来年には抜かれる予測が出ている。このことを念のため総理に指摘しておいた。

最後に、私は、各国に対抗できる日本の製造業の大きな戦略について問うた。

総理は、答弁用の紙を読みながら「産業用ロボット、日本はかつては進んでいたんですが、しかし、その後しばらく注目されていなかった。安倍政権においては再びここにスポットライトを浴びせまして…」。

残念ながら、ロボットにこだわる総理からは日本の製造業復権の大きな戦略は最後まで聞けなかった。これが、私が日本の製造業の戦略についてこれから連載しようと思った大きなきっかけである。
(参議院議員)

山田太郎(やまだ・たろう)
参議院議員。日本を元気にする会 政策調査会長。慶応義塾大学経済学部卒、早稲田大学大学院博士課程単位取得。外資系コンサルティング会社を経て製造業専門のコンサルティング会社ネクステック社を創業、3年半で東証マザーズに上場。国内外大小300社以上の製造業を支援。国内・海外企業を買収、中国を含むアジア各国に積極展開した。その後、日本企業の海外進出支援会社を創業。東京工業大学特任教授、早稲田大学客員准教授、東京大学工学部非常勤講師、清華大学講師などを歴任。参議院議員に当選。これまでの事業家・起業家の経験を生かすステーツマン(政治家)として活躍している。

参議院議員山田太郎オフィシャルWebサイト

「山田太郎の製造業は高度な情報産業だ!」オートメーション新聞にて連載中

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