日独米、IoT国際基準に向かって大きく前進 IoT推進C、IIC、オープンフォグ連携へ

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日本のIoT推進団体である「IoT推進コンソーシアム」と、GEを中心とした「インダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)」、マイクロソフトやシスコなどの「オープンフォグコンソーシアム(OpenFog)」が、IOTの研究開発において連携することが分かった。すでに連携を始めていた日本とドイツ、ドイツとアメリカと合わせ、日独米のIoT先進国間の相互協力体制が整うこととなった。これにより第4次産業革命は新たなステージに突入する。

いよいよ到来 IoT基準化に向けた日独米の連携

 3年前にIoTやインダストリー4.0が話題になりはじめた当初、各国の動きはそれぞれバラバラで、「どこが次の時代、第4次産業革命の主導権を取るのか」といった国際基準争いの様相を呈していた。日本でも、先行するドイツのインダストリー4.0、アメリカのインダストリアルインターネットに対し、日本はどうするのか、どうなるのかといった論議がされ、官民が参加するIoT推進団体ができた経緯がある。今回の連携で日独米がIoTに関して同じテーブルで議論する場が整備されてIoTの国際基準化が進むことにより、第4次産業革命は新たな展開を迎えることになる。

先行したドイツ インダストリー4・0プラットフォーム

 IoT分野への取り組みで先行したのはドイツだった。2013年にドイツ政府が「Industrie4・0」構想を策定し、それを受けてITや通信を司るBITKOM(ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会)、機械産業のVDMA(ドイツ機械工業連盟)、電気電子のZVEI(ドイツ電気・電子工業連盟)の3つの業界団体が協力して、主に製造業領域のIoT活用を進める「インダストリー4・0プラットフォーム」を設立。メンバーには上記3団体のほか、シーメンスやKUKAなどFA機器メーカー、BMW、ダイムラークライスラー、ボッシュなど自動車関連メーカー、SAPなど、製造分野のIoT化に必要な機器・ソフトウェアメーカーと、工場を運営するユーザー企業が名を連ねた。
 インダストリー4.0という製造領域のIoT化、デジタル化を国策として掲げ、世界をリードする製造技術と自動車産業の優位性を保ち、今後もイニシアチブを握るために官民が一体となっていち早く動いたのがドイツのインダストリー4.0の特徴だ。

民間企業中心、ITからのアプローチをとったアメリカ

 アメリカでは民間の大手企業、特にIT系企業が中心となり、IoTやデジタル技術を使ってビジネスを変革して主導権を握ろうという動きが中心となった。
 IICはそのなかでも大きなグループで、14年3月にGEが中心となり、AT&T、シスコ、インテル、IBMの5社で設立された。その領域は、製造業色の強いインダストリー4.0と異なり、ヘルスケアやエネルギー、スマートシティ、輸送など、広範囲に渡っている。またメンバーも国際色豊かで、会員226社(16年9月末現在)にはアメリカ以外のメンバーも多く、日本からも三菱電機や日立製作所、NEC、富士通、トヨタ自動車など多数の企業が参加している。ボードメンバーもGEとIBM、インテルの設立メンバーに並んで、ドイツのSAP、ボッシュ、中国のファーウェイ(HUAWEI)、日本の北米富士通などが務めている。
 オープンフォグコンソーシアムは、ARM、シスコ、デル、インテル、マイクロソフト、プリンストン大学エッジレボラトリーによって15年11月に設立された。16年4月段階では設立メンバー6社・団体に加え、GEやシュナイダーエレクトリックなど24社・団体(16年4月現在)が参加。日本からは富士通と東芝が加盟している。フォグコンピューティングとは「クラウドのポテンシャルを最大限に引き出しつつ、よりエッジに近い部分でインテリジェントな処理を行うという、新たなコンピューティングモデル」(シスコシステムズHPより)であり、IoTにおけるレイテンシ(ネットワーク遅延)の問題を解決し、処理を効率化できる手段として、IoTにおける通信基盤で有力視されている技術である。

必然?偶然?ドイツとアメリカの連携

 かたや国策で製造業領域に絞ったドイツと、グローバルな巨大民間企業中心で広い産業をカバーするアメリカ。両方ともIoT技術を使ったビジネス変革を目指しても、当初は注力する領域が異なっていたためにクロスすることは少なかったが、次第に規模が大きくなって領域が広がったことによりお互いに重なる部分が出てきて、参加企業も重複することが増えてきていた。
 そのタイミングでインダストリー4.0プラットフォームとIICが接近し、3月にIoTの国際規格の策定に向けて協力していくことに合意した。その発表の1カ月後のドイツ・ハノーバーメッセは、アメリカをパートナー国に迎えて行われた。会期中にはオバマ大統領とメルケル首相による会談が行われ、製造業領域で連携していくことも発表された。

日本の状況、海外との連携は?

 製造業を対象としたドイツのインダストリー4.0を受け、日本でも14年ころからIoT活用の機運が高まった。そのころから企業の枠を超えた連携がはじまり、IoT推進団体が作られていった。
 その発端を切り開いたのがIVI(インダストリアル バリューチェーン イニシアチブ)だ。日本機械学会の「つながる工場」研究分科会からはじまり、15年6月に任意団体として発足。今年6月に一般社団法人となった。企業活動を協調領域と競争領域に分け、協調領域をリファレンスモデルとして整理して共有することで製造業の競争力強化につなげることを目標に活動している。
 15年1月に内閣府から発表された「ロボット新戦略」を受け、それを推進する組織として経済産業省や各業界団体、民間企業で発足したのが「ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)」だ。JEMA(日本電機工業会)やJEITA(電子情報技術産業協会)、JMTBA(日本工作機械工業会)、JARA(日本ロボット工業会)など工業団体をはじめ、電機メーカーやロボットメーカー、通信機器メーカーなどが参加し、ロボット技術の活用を中心とした産業振興を目指している。
 また10月には総務省と経済産業省の支援を受けたIoT推進コンソーシアムが発足。製造業領域に限らず、あらゆる分野でのIoT活用とその技術開発、ビジネスモデルの創出などを目的とし、会員も機器メーカー、通信事業者、ユーザー企業、サービス産業など幅広い分野から参加し、現時点で1000近いメンバーがいる。
 当初、似たような目的で、参加メンバーも似通っている団体が3つもでき、乱立などと揶揄された。しかし現在では、3団体はそれぞれ民間ベースからの積み上げを得意とするIVI、製造業領域の企業が数多く参加し、国と一緒に第4次産業革命を推進するRRI、全産業をカバーし、通信やIoTの社会実装のための技術開発や政府の支援などを行うIoT推進コンソーシアムといったように、注力分野や役割分担がされている。最近になってお互いの連携が深化させ、歩調を合わせてIoT、第4次産業革命に向けて進んでいる。
 海外との連携に関しても、2015年3月にはRRIとドイツ・インダストリー4.0プラットフォームが第4次産業革命に向けた協力について共同声明を発表。そして今回、IoT推進コンソーシアムとIIC、オープンフォグコンソーシアムが合意したことにより、第4次産業革命に向けた日独米のIoT推進団体がお互いに協力体制を組むこととなった。これまで国によってバラバラだったIoTの方向性に、ある程度の統一性ができたことによりIoTの普及スピードが上がる一方で、競争が激しくなることが予想される。
【各国のIoT推進団体】
インダストリー4.0プラットフォーム
IIC
オープンフォグコンソーシアム
ロボット革命イニシアティブ協議会
IoT推進コンソーシアム
IVI